日本精神神経学会でシンポジウム登壇をしてきました(6月19日)
先日、パシフィコ横浜で開催された第122回日本精神神経学会学術総会において、シンポジウム「精神疾患患者の増加と医療の受け皿について考える」にシンポジストとして登壇しました。私は「精神疾患患者増加時代におけるプライマリケアの役割」というテーマで発表を行いました。
近年、日本における精神疾患患者数は増加を続けており、精神科医療だけでは対応しきれない状況が生まれています。総合診療や家庭医療の現場では、抑うつ、不安、不眠、身体症状などを主訴として受診する患者さんの背景に精神的な問題が存在することが少なくありません。精神科を受診する前の段階から、プライマリケアが重要な役割を担う場面が増えています。
今回の発表では、地域病院や診療所での総合診療外来の経験をもとに、精神疾患患者の増加を単なる「需要増」としてではなく、医療システム全体の構造的課題として捉える必要性を提起しました。精神科初診まで数か月待ちとなる地域も少なくなく、その結果としてプライマリケアが意図せず精神科医療の「受け皿」となっている現状があります。
また、精神疾患は身体疾患や社会的困難と複雑に絡み合っています。例えば、慢性疼痛や不眠を繰り返し訴える高齢者の背景に、配偶者との死別による孤独や抑うつが存在することがあります。しかし、そのような患者さんの中には精神科受診への強い抵抗感やスティグマを抱えている方も少なくありません。こうした事例では、診断や薬物療法だけでなく、患者さんの生活世界や人間関係に目を向けた支援が求められます。
シンポジウムでは、疫学研究、小児医療、診療報酬制度、精神科医療の立場からも報告がなされ、精神疾患患者増加時代における医療のあり方について多角的な議論が行われました。
私自身、総合診療医として日々診療を行う中で、精神科とプライマリケアの境界はますます曖昧になっていると感じています。精神疾患患者数の増加は、精神科だけの問題ではありません。地域医療、福祉、教育、コミュニティを含めた社会全体の課題として捉え直し、精神科医療とプライマリケアがよりよく連携できる仕組みを考えていく必要があると改めて感じた学会でした。
活発な議論をしてくださった座長・演者の先生方、そしてご参加いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。(孫)




