インドネシア総合診療研修報告4日目(3月28日)
本日は、まず午前中にプスケスマス(Puskesmas)、ポシャンドゥ(Posyandu)、プスツー(Pustu)を訪問しました。補足としまして、プスケスマスは、県や市が運営する保健所と診療所が一体化した施設です。また、プスツーは、プスケスマスとポシャンドゥの中間的な存在だと考えてください。
プスケスマスは、1~5のクラスターに分けられており、1はマネジメント、2は子どもと母親、3は大人と高齢者、4は感染症、5は検査や歯科、救急、薬局などを担います。どの年代、どんな疾患でもGP(General Practitioner、総合診療医)に診ていただくものだと思っていましたが、このようにクラスターに分かれて診療を20260417son驚きました。プスケスマスに来る患者さんの50%が紹介を受けて来られます。薬物による治療の他にも、指圧での治療や伝統的なハーブを用いた治療を行うことができます。興味深いことに、治療に使用する伝統的なハーブがプスケスマスの庭で育てられていました。
前提として、インドネシアでは大学卒業後、全員GPになり、その後、専門医(Specialist)になるかどうかを選びます。前回の研修の報告会において、なぜGPは給料が高い専門医にならないのか疑問に思っておりました。そこで、プスケスマスで働いている歯科医に歯科を選択した経緯をお聞きする機会をいただきました。専門医になろうと思うと、最初にプスケスマスの許可、次に政府の許可を得る必要があり、許可が下りるのはその専門科に需要がある場合のみだそうです。したがって、歯科医になりたかったわけではなく、歯科に空きがあったから歯科医になったというわけだったのです。このように、インドネシアでは専門医になるための激しい競争があり、自由に専門性を選べる日本とは大きく異なっています。少し話が変わりますが、日本において診療科の偏在という問題があります。この問題の解決のために、今後、多少の規制が必要になってくるのではないかと思いました。
インドネシアには、BPJSと呼ばれる国の保険制度があります。その課題として、貧困層に対する政府の負担の増大がありました。しかし、プスケスマスでは貧しい人も訪れることができます。特にスマラン市は人口が多いため、地方政府の財源で賄うことができるからです。スマラン市以外の人口が少ない市では、貧しい人も救うことが難しいのではないかと思いました。
ポシャンドゥは、プスケスマスよりも規模が小さく、身長測定などを実施し、健康に関する教育や相談を地域住民に対して行います。ポシャンドゥで特徴的なことは、主に、カデル(Cader)と呼ばれるボランティアによって運営されていることです。記録の整理や医師といった職種のお手伝いなどを行います。カデルは、村に必ず配置され、村の人口によってその人数は決められます。カデルが不足することもあるそうなので、その持続可能性について疑念を抱きました。
プスツーは、プスケスマスの縮小版のようなイメージで、ここでもクラスターに分けられていました。プスツーでもカデルが活躍しています。地域住民から構成されるカデルは、医師と患者さんの距離を縮めるという役割があります。カデルは、患者さんが気軽に健康に関する相談をしやすい環境を生み出し、病気の予防や早期発見に貢献すると思います。したがって、日本でも医療ボランティアの教育や配置により力を入れると良いと思いました。
最後に、2チームに分かれ、ディポネゴロクリニックと眼科のクリニックを見学しました。私は、ディポネゴロクリニックを見学しました。このクリニックは、15人のGP、5人の看護師、1人の助産師が働いています。インドネシアの医療制度についてより詳しくお話を聞けました。
まず、医療機関へ支払われる報酬の違いについてです。日本では、各行動にそれぞれ診療報酬が定められており、たくさん診療を行うほど政府から診療報酬をもらえる出来高払い制がとられています。日本の病院の約6割が赤字経営となっている原因の一つに、この診療報酬の低さが挙げられています。一方、インドネシアのクリニックでは、患者さんにまずアプリで登録を行ってもらい、その登録者の数に応じて政府から毎月一定の報酬を得る人頭払い制がとられています。持続可能な医療の提供のために、それぞれの支払い方法のメリット・デメリットを整理し、今後、病院の経営についてもっと学んでいきたいと思いました。
次に、GP制度についてです。患者さんは決められた範囲内の医療機関をアプリで1つだけ選択します。もし、選んだ医療機関が気に入らない場合は、変更することも可能だそうです。また、範囲外にいる際に医療機関にかかりたい場合は、月に3回までかかることができます。最初から医療機関が国によって選ばれていなかったり、回数に制限はありますが一応どこの医療機関でも受診できたり、思っていたよりも自由度が高く、フリーアクセスと正反対の位置にあるものではないと思いました。医療費の増加を抑制するのに、GPの診察をまず受けて、さらなる治療が必要と判断した場合のみ、より高度な病院へと紹介する紹介システムは、非常に効果的だと思いました。
日本でもGPは、プライマリケアを適切に実践できる医師を指しますが、まだまだ数が足りず、プライマリケアをきちんと学んでいない開業医がその役割を担っています。今後、すべての人が適切な医療を受けられるよう、患者さんの道しるべとなるGPを増やしていけたらいいなと思いました。
最後になりますが、この研修を用意してくださったすべての皆様に感謝の意を表します。写真だけでは伝わらない、肌で感じる経験をすることができました。この先も、ディポネゴロ大学とともに学び合い、よりよい医療を目指していきたいと思います。本当にありがとうございました。
(M4 山田)







