フィールドノーツを書くことが診療の見え方を変える:人類学の視点を入れた総合診療教育の研究論文発刊(7月30日)
このたび、大山診療所所長・井上和興先生による教育実践に関する論文が、国際会議論文集 The Human Side of Service Engineering に掲載されました。本研究は、文化人類学で用いられる「フィールドノーツ」を活用し、総合診療医の研修をどのように豊かにできるかを検討した報告です。
本実践では、総合診療専門研修医と指導医を対象に、①文化人類学とフィールドノーツに関する講義、②病棟ラウンドでの観察と記録、③フィールドノーツを共有しながらの振り返り、というプロセスを行いました。同じ場面を観察していても、参加者が書き留めた内容は、会話、声のトーン、空間の配置、音や光など多様であり、その違いを共有する中で、自分自身の「ものの見方の癖」に気づいていく様子が示されました。
参加者は、普段の診療では見過ごしていた環境や非言語的な要素に目を向けるようになり、診療行為を一歩引いて捉え直す経験をしていました。本研究は、フィールドノーツを書くことと共有することが、臨床現場を多角的に捉え直し、省察を深める有効な教育手法となりうることを示しています。知識や手技だけでなく、「どのように現場を見ているのか」を問い直す試みとして、今後の総合診療医教育に示唆を与える内容です。
論文情報
Inoue K, Taniguchi S, Ito Y.
Using Fieldnotes to Enhance General Practitioner Training
The Human Side of Service Engineering. 2025;182:187–194.
DOI: 10.54941/ahfe1006418


