『笑顔がつなぐ時間』
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10年間続けた仕事を介護のために辞めました。やがてその日々は終わり、家族から「ゆっくりしたらいい」と言われました。しかし、どうも同年代の人たちは働いているようです。そこで、日にちや勤務時間を減らし、現在は、憧れていた「Wワーク」というものをしています。地域医療学講座での事務の仕事と、もうひとつは学童保育です。
学童保育の仕事を始めてから、放課後の子どもたちと過ごす時間が、私にとって特別なものになっています。一緒に過ごしているときにふと見せてくれる笑顔。その無邪気でまっすぐな表情に出会うたび、「ああ、やっぱり子どもが好きだなあ」と思います。教師になりたかった自分を、少しだけ叶えてもらっている気がします。
子どもたちの笑顔を見ると、学生時代に訪れたネパールでの思い出が時折よみがえります。大学時代に訪れたペンションで、背中を押されて行った初めての海外の地。現地の学校で、ネパールの子どもたちとひとときを過ごしました。日本と比べれば決して恵まれた環境ではありませんでしたが、彼ら、彼女らは笑顔を絶やしませんでした。手をつないだときの温もり、お互いにカタコトの英語で語り合い、「日本に行ってみたい」と言ってくれた温かな言葉、あの明るく人懐こい笑顔は、今でも忘れられません。
最近、ネパールの情勢が不安定だと新聞の投稿欄で目にしました。2025年9月、SNSの規制がきっかけで抗議デモが頻発し、外出禁止令も出されたようで、そんなニュースを見ると胸がざわつきます。あのとき出会った子どもたちは今どうしているのでしょう。どんな大人になっているのでしょう。あの笑顔のままの素敵な大人になっていてほしいと思います。直接確かめることはできませんが、放課後の教室で日本の子どもたちの笑顔を見るたび、「どうか無事に、あの子たちの未来も守られていますように」と祈るような気持ちになります。
学童で過ごす日々は派手ではありませんし、時には大変なこともあります。ケンカの仲裁をしたり、泣いている子の話をじっくり聞いたり、宿題を面倒がる子どもたちに声援を送ったりします。それら日常の先にある“笑顔”が、私の心に灯りをともしてくれます。そんな瞬間が、私にとっての特別な時間になっています。
子どもたちは、今の自分の立ち位置を教えてくれる存在です。先生として働く夢は途中で手放しましたが、こうして別の形で子どもたちと関われていることに、不思議なつながりを感じます。そして学童の教室に響く笑い声の中には、ネパールで出会ったあの子どもたちの声も、少しだけ混じっているような気がしています。
Author:宮本 律子
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