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3010月 2025

2025年度教養ゼミナール「医学・医療に役立つ人文学の知」が開講しました(10月3日)

10月3日、2025年度の教養ゼミナール「医学・医療に役立つ人文科学の知」が開講しました。今年は医学科1年生10名が選択してくれました。このゼミは、哲学・社会学・人類学などの人文科学の知を医療に応用することを目的とし、今年度はフッサール、ハイデガー、メルロ=ポンティ、レヴィナス、アーレントという5人の哲学者を中心に、現象学の視点から医療を読み解いていきます。

初回は「なぜ医療に哲学が重要となるのか」という導入テーマでした。授業の冒頭では、どんな考えも尊重される安全な対話の場づくりを確認し、「正解を探す」のではなく「問いを立てる」「視点をずらす」力を養うことを目標に据えました。学生からは「哲学に興味があって参加した」「医療倫理の選択科目が面白かった」などの声が上がり、自由で温かい雰囲気の中でゼミが始まりました。

講義では、アーレントの“行為(action)”の概念を手がかりに、「法則や統計では捉えきれない個人の経験にどう光を当てるか」を議論しました。さらに、disease(病)とillness(病い)の違い、そして医療者と患者がそれぞれの“眼鏡”を通して世界を見ているという比喩を用い、現象学のエポケー(判断中止)や還元といった核心的な考え方を紹介しました。映画『生きる』や『マトリックス』のシーンも交え、私たちが“現実”だと思っているものの前提を問い直す対話も印象的でした。

最後に、岡山大学総合診療医学講座の横田雄也先生も加わり、医療現場における「現象学的態度」の意義についてコメントをいただきました。学生たちからは「哲学が医療の見方を変えることに驚いた」「患者の感じ方に寄り添うことが医療の第一歩だと感じた」といった感想が寄せられ、次回以降の議論への期待が高まっています。

このゼミでは、各回の発表者が哲学者の主要概念を紹介し、参加者全員で対話を重ねながら「人間を理解する医療とは何か」を考えていきます。医療の技術や知識だけでなく、“意味”を問う力を育むこの時間を、学生たちとともに大切に紡いでいきたいと思います。

(孫)

 

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